大賞

該当作品なし

 

 

グループSNE賞

綾部ヒサト作
『戯れに咲くカルマ』

 

 

佳作

TAKEO作
『霧隠れの七人』

 

株式会社グループSNE
(安田均、柘植めぐみ、黒田尚吾)

 

●総評

マーダーミステリーの作り手は年々増えており、発表される作品数は月50以上に及ぶ。しかしその大半はオンラインプレイのみ。わざわざ紙に印刷してカードをスリーブに入れ、冊子を作り……と手間暇かけて応募してくださったみなさんの意欲には頭が下がる。  そうした力作マーダーミステリーが今回もたくさん集まった。ほとんどが一定レベルに達しており、“遊べる”作品であることは間違いない。しかしいざ大賞を選ぶとなると、なかなか難しかった。 

 

公式サイトにもあるが、新作マーダーミステリー大賞は「ストーリー」「システム」「ゲーム性」の三要素を重視している。設定に斬新さはあるだろうか? 従来にないユニークな試みはあるだろうか? 推理、論理がしっかりしていて、謎解きの楽しさはあるだろうか?  正直言って今回、それらをすべて兼ね備えた作品には出会えなかった。「設定は面白いがシステムは普通」だったり、「ギミックには凝っているが物語はありきたり」だったりと、まさに帯に短し、たすきに長し。

 

しかし多少バランスは悪くとも、「なんかよくわからないけど面白かった!」と印象に残る作品はあり、そうした2点をグループSNE賞と佳作に選出させていただいた。詳しくはそれぞれの講評をお読みいただきたい。  最後に残念に思ったことを挙げておく。応募作の中には、完全な“二次創作”(既存の世界観をそのままなぞってマーダーミステリーに置き換えただけのもの)や、グロテスク、もしくはセンシティブな内容をあえて狙ったものもあった。新作マーダーミステリー大賞は一般の多くの人に向けて「ぜひ商品化したい」「ぜひ公演したい」と思わせてくれるマーダーミステリーを求めている。作り手側からも、負けないくらいの“本気”を見せてもらえればと思う。

 


 

●個別講評
『戯れに咲くカルマ』  
田舎にひっそりとたたずむ宗教団体の拠点が舞台。大判の地図が封入されていて、調査する場所を決めるやり方が独特で面白い。大胆なトリック、どんでん返しもあって楽しめる。ただプレイヤー人数が5人と少ないわりに、自分が傍観者であるように感じるキャラクターと「話の中心」にいるキャラクターの差が激しいように思える。商品化を目指すなら、人数を増やしてそれぞれのキャラクターを公平に怪しくといった工夫が必要だろう。

 

『霧隠れの七人』  
グループSNEで一次選考をおこない、「他の団体にもぜひ遊んでもらいたい」と勧めた作品。第一印象は「忍者ねえ……それもちょっとファンタジーっぽいし大丈夫かな」と懐疑的だったが、実際にプレイしてみて「面白いやん!」となった。キャラクターが立っており、演じ甲斐があってアクションにも力が入る。システムは「投票」に重きを置いているが「謎解き」は少し比重が軽く、“マーダーミステリー”としてはどうだろう、という疑問が残り、大賞には選出できなかった。

株式会社コザイク代表取締役
秋口ぎぐる(川上亮)

 

●総評

どの作品もとても楽しく遊ばせていただきました。僕自身もマーダーミステリーを作る人間なのですが、「作り手としての自分の美学からは外れるのだけどプレイしていて楽しい」「盛りあがる」「悔しいけど評価するしかない」と思える作品ばかりで、逆に勉強させていただきました。

 

応募作品の傾向として、今回もGMレスやパッケージを想定したものが多かったと思います。そして、それは当然なのかなとも思いました。

 

ふだんから店舗公演に参加している人でなければ「自分も公演型マダミスを作ろう」とは思わないわけで、そしてそういった人が実際にシナリオを作成した場合、わざわざ(審査に時間のかかる)公募に応募する必要はありません。プロとしてデビューしたいのであれば、ひいきにしている店舗に持ちこみ、アドバイスを求めれば済む話です。また、ふだんからオンラインでマダミスをプレイしている人であれば、自作のシナリオをオンラインで公開・販売することが最も身近なデビューあるいはマネタイズの方法となるでしょう。つまり本「新作マーダーミステリー大賞」は、基本的には「ふだんパッケージ版しかプレイする機会のない(僕のような)地方在住の人間」にしか意味がない賞だ、ということになります。

 

ただ一点、「新作マーダーミステリー大賞」受賞作が世に出る場合、それ以外の経路とは異なる点があります。それは、商品化にあたり、主催団体のいずれかが作者さんと共に、真剣に作品のブラッシュアップを行う、という点です。これまでの受賞作である『奇想、アムネジア』はコザイク(私)が、『ミッシング・ファイター』はグループSNEが、『地球より愛をこめて』はミステリアス・トレジャーが、作者さんと共に長い時間をかけて作品と向きあい、クオリティの向上に努めました。

 

これこそが「新作マーダーミステリー大賞」が存在する意味なのかな、とあらためて考えた次第です。そこに公演型、パッケージ型の違いはありません。主催団体と共に作品を高めてく――ここに価値を認め、応募していただくためには、我々自身がふだんから良いものを作る必要があります。あらためて身が引き締まりました。自己完結しました。「グループSNEやコザイクと一緒に物作りしてやろうじゃないか」という皆さん、ご応募お待ちしております。

 


 

●個別講評
『戯れに咲くカルマ』  
新興宗教の本部を訪れるとそこで事件が……という、本「新作マーダーミステリー大賞」の応募作の中でもよく見かける内容なれど、ギミックの面白さは随一。決してこの作品だけの仕掛けというわけではないらしいのですが、「なるほどーやられたー」とすがすがしく思えるプレイ後の納得感、とても良かったです。

 

『霧隠れの七人』  
マダミスでは珍しい、忍者の里? を舞台にした作品。「殺人とか犯人さがしとかどうでも良いじゃねえか!」だとか「勝ち負け、カードの引き次第じゃねえか!」といった感想はあったものの、「でも面白いからよし!」と思える内容でした。特にクライマックスの盛りあがりは最高。「忍者もの」ならではのアクションが飛び交います。忍者にまっっっったく興味のない僕でも心の底から楽しめました。

ミステリアス・トレジャー
代表 水谷剛

 

●総評

まずは、今回も多数の方々から作品をご応募いただきありがとうございました。

 

今回は傾向として、ワンアイデアが光る作品が多かったように思います。このシステムや仕掛けは面白いなと思える作品にたくさん出会うことができました。一方で、システムや仕掛けは面白いと思えても、ミステリー部分やゲーム部分に難があり、マーダーミステリーゲームとして賞を与えたいとは思えない作品が多かったこともまた事実です。自身がマーダーミステリーゲームのどのような点に面白さを感じるかを深掘りし、どうすればアイデアを生かすことができるかをひたすら考えることが、良い作品を生み出す唯一の道なのではないかと思います。

 

また、これまでの3回に共通して言えることですが、GMあり作品については審査員の期待と応募者のイメージにギャップがあるように感じております。審査員側は、GMもゲームの一部として関わり、謎を解いたり、ストーリーを体験したりするうえで重要な役割を果たす、専門店で公演されているような作品を想定しているのですが、GMありとして応募された作品の中には、GMなしでも成り立つようなものが多く見受けられます。この部分は審査側の発信不足でもあるかもしれませんが、ぜひGMが果たすべき役割を再考していただければと思います。

 


 

●個別講評
『戯れに咲くカルマ』  

カルト教団が集住する集落という舞台設定と調査方法が独特なルールを読んだ時点ではワクワクしました。ただ、自身の秘密を隠しつつ犯人を捜すうえでのジレンマや、誰を信じるべきかという葛藤が物足りないキャラクターが多かったように感じました。プレーヤーがどのような選択をしても最終的な結末が似たり寄ったりになる点も残念でした。

独特な調査方法を生かした仕掛けは面白く、種明かしの段階ではその手があったかとしてやられた気持ちになっただけに、全体としてはもったいないなと感じました。

  

『霧隠れの七人』  

ルール説明の時点で明らかになるとおり、犯人捜しではなく次期指導者選びが中心の作品。果たしてこれはマーダーミステリーなのだろうかと思いつつプレーしてみると、これがなんと盛り上がるんですよ。指導者選びの指標として「精神性」という明確なパラメーターを設けることによって、皆さんが誰を次期指導者に選ぼうともそれはそれで皆さんの選択ですよねなどという生ぬるい話ではなく、間違った人を選ぶとバッドエンドが待っているぞということを明確にしているためにプレーヤー間に疑心暗鬼が生まれることや、アクションフェーズでさぞかしいろいろなことが起こるのだろうなとドキドキさせられることが、面白さにつながっているのだと思います。審査でテストプレーを行った際の参加者の反応もピカイチでした。

とはいえミステリー部分があまりに弱いという点がネックで惜しくも大賞は逃しましたが、純粋に楽しかったという点では大賞にも匹敵するくらいの作品でした。

Rabbithole

酒井りゅうのすけ

 

●総評

新作マーダーミステリー大賞にご応募いただいた皆様、ありがとうございました。

第3回目となる今回の作品群をプレイさせていただいて最初に感じたのは、ゲームマスターが不要で遊べる形をよく研究されている作品群で、実際のプレイを想定されたマニュアルの作りなども他のパッケージ作品やオンライン作品を元に研究されて自身の作品に反映されておられるのか、非常に遊びやすい形の作品が多数ありました。

 

そして、作品の推しポイント(楽しんで欲しい所、ビックリして欲しい所、印象に残って欲しい所など)も明確な作品が多かった事も印象的です。

この推しポイントの分かりやすさはとても良いポイントではありましが、同時にその1点勝負になってしまっている作品も多くありました。そのような状況から今回は残念ながら大賞にと紹介できる作品を出せませんでした。

明確な推しポイントを軸に発展させた物語や、複数の推しポイントを盛り込んでいただき深みを増した物語体験の中で、それぞれのキャラクター達の人生を感じられる大賞作品が誕生するのを楽しみにしています。

 


 

●個別講評
『戯れに咲くカルマ』  

あまり言ってしまうとネタバレになるので難しいですが、仕掛けられた推しポイントは非常に好みの作品でした。

 事件の作りも面白く、解説でも盛り上がりのある作品でした。もう少し物語の核の部分に全てのプレイヤーキャラクターが絡みつく展開があればと感じました。またそれぞれの秘密がバレるかどうかのバランスももう少しシビアに調整いただ けるとより良い体験になったのではないかと思います。

 

『霧隠れの七人』 

 審査の際の体験では独特な世界観で非常に楽しませていただきました。しかしマーダーミステリーとしての事件の謎や ジレンマなどベーシックな部分で少し物足りなさを感じてしまいました。もしもこの作品がRabbitholeに持ち込まれていたなら、「大きな書き換えは発生するかもしれませんが、目標設定の調整やゲームマスターのタスクを作ってみませんか?」とご提案していたのではないかと思います。最終的にはマーダーミステリーではない作品となるかもしれませんが、面白い物語体験になると思います。

ディアシュピール株式会社(トリックスター)
代表取締役 川口正志

 

●総評

今回もたくさんの作品をご応募いただきました。ありがとうございました。

 

前回は「SNE作品を基軸とした同じようなシステムの作品が多かった」と総評で書かせていただきましたが、今回は前回とは打って変わって、非常にどの作品も独創的で、とてもワクワクしながら楽しく審査をさせていただきました。

 

ただ、奇を衒う故、案内役のスタッフが躊躇するくらいセンシティブな内容に踏み込んだ作品もあり、コンテストとしてはなかなか選び辛いものもございました。ただ、それも個性と受け取りました。個性を磨くのはとても良い事であり、前述の通り非常に楽しかったです。

 

審査が楽しかったうえで、今回大賞が出せなかった理由は、個性に頼るあまり基本的な構造の欠如が見られたことにあります。「マーダーミステリーとは何なのか?」という定義なようなものを語るつもりはありませんが、本コンテストの応募要項にあります”「ストーリー」「システム」「ゲーム性」3つの構成要素を満たす対話型推理ゲーム”という、いわば「制約」を意識した作品が少ないと感じており、特に「ゲーム性」を落としてしまっている作品が多く見受けられました。

 

例えば、狩猟ゲームならドラゴンを倒せばアイテム(素材)やお金が手に入るといった「インセンティブ」が行動の結果として伴います。アイテムでなくとも、ストーリーが分岐したり、分かり易く「勝利点が得られる」でも良いかも知れません。マーダーミステリーで言えば「犯人を捜すことにインセンティブがあるか否か」です。一生懸命犯人を捜したにも関わらず、その行為に意味を持たせない作品が多く、2~3時間「何をやらされていたのか?」となることがしばしばありました。「遊んでいる最中は楽しくても、終わったときに釈然としない」といった感想で終わるため、「コンテスト作品としては良い評価にならない」という結果になったのかと思います。

 

とはいえ、遊んでいる最中は楽しい作品が多いのも事実で、非常に悩ましく、今回のような賞が付与される結果となっています。

   


 

●個別講評
『戯れに咲くカルマ』  

「キャラ格差がある」という点に尽きる作品です。5人用の作品ですが、1人あるいはギリギリ2人以外は「モブキャラ」のような扱いになっています。しかし、中心人物が楽しい作品かと言えば、中心人物は物語の全容を最初から知ってしまっているため、独特なプレイ感です。オチも納得感が薄く感じました。ただ、作者がピックアップしたい部分は十分に伝わってくる作品であり、良い意味で尖っており、非常に面白さを感じました。

   

『霧隠れの七人』  

率直に「これはマーダーミステリーではない」という感想です。システムにも目新しさはありませんし、強制密談も多く終わった後の納得感といいますか「後味」的なものもザラつくので個人的にマイナスな面が多いのですが……世界観であったり、人物設定であったり、細かく魅力が散りばめられ、失礼な書き様ですが「不思議と楽しく遊べて盛り上がってしまう作品」でした。ただ、前述したように「マーダーミステリーではない」と感じてしまい、その辺りの納得感に欠けるものでしたので、佳作となりました。

受賞作品は

製品化 or 公演化!

昨今、マーダーミステリーはオンラインを中心に、制作者がシナリオを発表できるチャネルが増え、作品が数多く公開されております。その一方で、マーダーミステリーというジャンルに私たちが初めて触れた時に感じた面白さをもう一度感じさせてくれる作品は減っているようにも感じています。今一度、マーダーミステリー特有の面白さ溢れる作品との邂逅を求め、第3回新作マーダーミステリー大賞を開催いたします。


第1回新作マーダーミステリー大賞パッケージ部門で大賞を受賞した『羅生門☆プリンシプル』は、運営団体および作者アーキテクト氏による調整を経て『奇想、アムネジア』と改題されました。グループSNE/cosaicよりパッケージ版が販売されているほか、運営団体により公演が行われており、好評を博しております。

第2回新作マーダーミステリー大賞では、大賞作品は選出されなかったものの、奨励賞の『ミッシングファイター』および、ミステリアス・トレジャー賞の『地球より愛をこめて』は、製品化に向けて各団体および制作者様との協議が始まっております。

マーダーミステリーとは、「ストーリー」と「システム」から成る「ゲーム性」を持ったコンテンツです。「ストーリー」だけでも「システム」だけでも成立しないため、これら3つの構成要素が適切に制作され、構築されているかがまず評価のポイントとなります。そしてなにより、「プレイして面白い」或いは、「試みとして面白い」ことが求められます。

また、応募に際し満たすべき要素を以下に記載します。これらは、評価基準の一部であり、満たしていれば必ず受賞できるという性質のものではありませんが、基準を満たした作品が評価の対象となります。

今回は「GMあり部門」「GMなし部門」という区分を撤廃いたします。

ただし、応募の際は、応募作品をプレイする際にGMの要不要を必ず明記してください。

2023年12月31日(当日消印有効)

2024年6月頃を予定 → 2024年8月を予定

〒650-0001
兵庫県神戸市中央区加納町2-9-20
株式会社グループSNE「新作マーダーミステリー大賞」係

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