「パン!パン!パン!」
会議室の扉を開けると、耳を突く破裂音が3つ。
カレンとゴージャスは音におどろきながらも、目の前の光景に「やっぱり」と言葉を溢していた。
「お誕生日おめでとー!」
事務所の社長、役員、スタッフ、所属タレントの面々、もちろん「黒丘もえ」も、満面の笑みでクラッカーを打ち鳴らしていた。
部屋の中央には大きなホールケーキが4つ。そのうちのひとつには「Happy Birthday カレン」の文字が大きく書かれ、その下に申し訳程度に小さく「& ゴージャス」と描かれていた。
もえは計画が思うように行かなかったと少し怒って見せるが、マネージャーの桜沢は満足そうだった。
なんとも迷惑な話だ。もえを心配した2人は、半日のあいだ本気で捜し回ったと言うのに……。
冗談じゃない。
本当に勘弁してほしい……
なんて、思っていたハズなのに。
気付けば、2人の顔は笑顔に満ちていた。
でも、
それでも一言、
言っておかなければならない。
息がピッタリな2人。
その剣幕をよそに、周囲からどっと笑いが起こる。
もちろんカレンも、ゴージャスも、零れ落ちる笑顔を止められなかった。
桜沢はそういうと、更に大きく口をあけて笑っていた。
祝福の空気が会議室を満たす。
目を丸くしたカレンとゴージャスは、視線を交わしてもうひとつ、少しビターな笑顔を溢すと、お互いへのプレゼントを差し出した。
プレゼントの封を開ければ、
色は違えどお互い同じもの。
とっても無難で、息ピッタリなプレゼント。
零れる笑顔は氾濫し、今日一番の大笑いとなる。
2人はきっと
つかず離れず、このままずっと
最高の幼馴染でいるのだろう。
そう……きっと。
Fin
& to be continued
half a year later
– 六花と灰色の夢見草 –
①事務所に訪れカレンのバースデーについて打ち合わせ
②事務所の先輩俳優『鈴木シュトラウス』とカフェで打合せ
→シュトラウスは、窯焼きパン工房「ひまわり」へ行って、予約している誕生日ケーキを引き取る
③シュトラウスとカフェ前で別れ商店街の雑貨屋でスカーフを購入
④桜の丘高校前で待ち合わせをしていたが、シュトラウスが来ないので校内へ
⑤ゴージャスとカレンが行動を共にしていることと、ゴージャスも誕生日であることを知り、誕生日ケーキに添える「&ゴージャス」を書いて待つ
⑥シュトラウスがケーキを引き取って来たので一緒に事務所へ
⑦事務所の会議室にて、誕生日会のセッティング
今回の事件(?)は、黒丘もえ及び、カレンの所属する事務所『ルシェルブル』総出でカレンの誕生日を祝おうとしていることを突き止めることが目的となる。
まず、ひとつは、カレンが事務所を訪れたとき、事務所内が騒然としていたこと。これは、来ないハズの(PINEで足止めしたはずの)カレンが事務所に来てしまったが故のドタバタである。しかし、この描写だけでは気付けないだろう。
次に、リッカへの聞き込みにもヒントがある。彼女は「店で売っているケーキ」をカレンに出している。これは、「窯焼きパン工房ひまわり」にてケーキが販売されていることを示唆する。
アイアイやウッチャンの証言から、黒丘もえは、ひまわりのオーナーに何かを予約注文していることが伺え、その量は多く、そして「慎重に持ち運ぶもの」ということが分かる。普通のパンであれば「慎重に持ち歩く」必要はあまりないように思える。これは「ケーキなのではないか?」と予想できないだろうか。一応、ダメ押しとして、イケメンから「オーナーが大量にホイップを使っていた」という証言も出てくる。
場所については「誕生日会を開けそうなところはどこか」という推測と、ゴージャスが桜沢に連絡した時の彼女の対応の不自然さから、「切迫して黒丘もえを捜そうとしていない」「桜沢は何かを誤魔化そうとしている」「実際は事務所にいる(誕生会をやろうとしている)のでは?」と想像できるかもしれない。
しかし、事務所と言ってもそこそこ広い。どこで誕生日パーティーをするのか?と考えると、カレンが事務所に行ったときから「会議中」として入れなかった会議室。ここに黒丘もえはおり、パーティーの準備をしているのである。
『白百合カレンの可憐な憂鬱』から約半年後。進級した「カレンちゃん」と「ゴージャス」が登場するマーダーミステリー
『六花と灰色の夢見草』
プレイ人数:5人
プレイ時間:約90分
希望小売価格:3,300円(税込)
『白百合カレンの可憐な憂鬱』から約9か月後。桜の丘商店街にある「窯焼きパン工房ひまわり」にて起こる殺人事件を題材としたマーダーミステリー
『六花と日輪草のペーカリー』
プレイ人数:5人
プレイ時間:約90分
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